サンディエゴ海事博物館のつづき。次は「HMSサプライズ(HMS Surprise)」を見学します。
18世紀のイギリス海軍の帆走フリゲート帆船をイメージして1970年にカナダの造船所で建造されたレプリカの帆船です。
建造時はHMSローズとして建造されましたが、2001年にみんな大好き20世紀フォックスが購入し、映画「マスター アンド コマンダー」で主人公たちの乗る船として撮影に使われたのです。その際にHMSローズからHMSサプライズへの改造がされたのだそうな。
この時代の帆船によくある船首像。剣と盾を持った女戦士の像で、ドンパチするき満々だな。盾にはタツノオトシゴが彫られてますが、何か縁起が良かったのかしら?像の形状はどうやら本物のHMSサプライズのものと合致します。
なお本物のHMSサプライズは元々フランス海軍のコルベットを分捕ったものだそうな。その時からの像なのかはちょっと分かりませんけども。
これも乗船できるので上がります。
帆船ですねぇ。いいねぇ。
後部からはB-39が見えます。今回入れなかったのでこれ見よがしに写真撮ります。
これが操舵輪。
フリゲート帆船くらいの大きさになると船の舵を直接操舵するのは力のいる作業になるので、綱を介してテコを使って操舵するようになったのでした。で、その綱を動かすのがこの操舵輪でござい。
船の操舵には欠かせない操舵輪はこの綱を動かすための装置が由来であり、操舵方式が機械式になっても帆船時代の名残として今に至るまで残っているのですな。
操舵輪が2つ付いているのは、2人で動かすのが前提だったからか。これも結構力仕事だったのでしょう。
甲板から海を見渡してみると、向こう側に空母が停泊しています。それもそのはずで、サンディエゴにはアメリカ海軍の基地があるのです。サンディエゴ基地(Naval Base San Diego)とノースアイランド航空基地(Naval Air Station North Island)の2箇所があり、一大拠点ですね。
コロナド半島にあるノースアイランド航空基地は海軍航空隊と航空母艦の拠点になっています。半島のほぼ一帯がクソデカい軍事基地になっていて、そこがもうひとつの街になっています。デカいアメリカ軍基地ではよく見られるやつですね。
ノースアイランドには2隻の空母の母港になっています。この写真に写っているUSSカール・ビンソン(CVN-70)がそうです。原子力空母は初めて見たんじゃないかしら・・・。クソデカいな。
USSカール・ビンソンといえば、その後北の将軍様がイキった時に派遣された空母ですよね。この時見ていたのね。
カール・ビンソンはアメリカ大統領ではないし知らない人だなと思って調べたら、海軍力を増強させた下院議員なのでした。どうでもいいですが、ビンソンといえばガンダムにビンソン計画という用語がありますが、この人が元ネタなのかしらん。
こっちがもう1隻の空母USSセオドア・ルーズベルト(CVN-71)。こっちは大統領から名前を取っています。
ビンソンといいルーズベルトといい、人名を艦名にするセンスは分からんというか抵抗ありますね。将来擬人化されたらどうするんだという要らぬ心配をしてしまいます。
HMSサプライズの見学を再開しましょう。
甲板には日除けのためのキャンバスが張られています。日除け以外にも甲板の下の船室の室温が高温になってしまうのを防ぐ役割もありにけり。
甲板の下にも入れるのだ。右舷左舷ともに大砲が装備されていて、戦争する気満々です。
ここの階はどっちかというと船内の食糧事情が興味深かったです。これはギャレーですね。船内厨房はキッチンではなくギャレーと呼びます。
これは暖炉でベーコンを作っているところ。18世紀の帆船なので冷蔵冷凍設備なんてありませんからね。とにかく保存食を作るのだ。
籠の中の鶏。鶏を生きたまま船に乗せておけばいつでも新鮮な鶏肉が食べられるよね!という発想。ただし鶏は卵を産みますゆえ、それを食べることからそんなにバッサバッサ締めていたことはないんじゃないかしら?鶏の他にアヒルとガチョウ、牛に豚に羊も運んでいた模様。これら食料のために生きたまま積んだ家畜のことをシーストックと呼んどりました。
なお肉と卵にありつけたのは士官だけ。下士官に人権はないんだなぁ。
道具箱がいくつかありまして、中には斧とか剣とか危なっかしいものがたくさん入っていました。これ、戦闘時に相手の船へ乗り込んでカチコミにいく時・・・いわゆる切込みする時に装備するやつでしょう。
ビスケットの上に置かれた魚の模型。見ただけではなんのこっちゃ分からないんですが、この魚はビスケットに湧くウジ虫対策です。
ビスケットは長期保存のために硬い硬いビスケットなんですが、それでもウジ虫が湧きにけり。そこでウジを取り除くためにビスケットの入った樽の上に死んだ魚を置きます。するとビスケットよりも魚のほうが美味しいですから、ウジが魚の方に移ってくるのです。ウジだらけになった死んだ魚は海にポイすればいいんですね。これをウジが湧かなくなるまで根気よく続ければウジのいないビスケットの完成。
船上生活の知恵ですね。でもビスケットはウジの食いかけだし死んだ魚の匂いが移ってそうだし。それどころじゃなかったのかもしれませぬ。
左の樽の中にある緑色のは新芽、つまりスプラウトです。野菜は栽培するもの。肉以上に新鮮な野菜も貴重ですよね。
船員たちは他に塩漬け肉、オートミール、チーズ、バターなどを食べていました。ビールも毎日8リットルは飲んでいたんですってね。わずかながらの娯楽だったのか、それとも何か事情でもあったのか・・・。
24ポンド大砲。やけに年季入ってるな。
大砲を動かすには1門につき6人の要員が必要です。熟練された砲兵達ならば、発射してから砲身内の清掃、砲弾の装填、標的の照準、再射撃まで2分でできます。といっても時間のかかる作業で、なるほど当時の帆船には再発射までの時間を埋めるために大砲がたくさん積まれているわけだと。
下士官の寝床、ハンモック。広げる空間さえあればどこにでも広げてしまうのだ。
特に説明がなかったんでアレでしたが、船尾にあるので船長室ですね。
帆船の船長室が船尾にあるのは、は船尾の方に重心があったから安定していたとか、部屋が風上にあるから他の船室や船員から漂ってくる異臭を嗅がなくていいとか、そんな理由を聞いたことがあります。あとは眺めも良さそうですよね。
ただし、船長室にも容赦なく大砲が置かれていて、意外と戦場との距離はすぐ近くなのだなと。
移乗攻撃時に使うパイク(槍)かと思ったら銃でした。銃身がすっげぇ長いけども。
甲板に戻りました。
マストにはたくさんの綱がぶらさがってますけど、この綱の一本一本にちゃんと役割があるんですから、把握し切るのは大変よのぉ。
HMSサプライズはこれでおしまい。次の船へ移乗します。
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