カナダ ビクトリアにあるBC航空博物館に行ってきた話の続き。これはフェアチャイルド・カナダ ボーリングブロークMk IV。通称ボリー。イギリスのブリストル ブレニムをカナダでライセンス生産した双発の爆撃機兼沿岸哨戒機です。ボーリングブロークの初飛行は1939年9月、生産数は626機。ブレニムの初飛行は1936年6月。当時としては先進的で、同時期の戦闘機よりも速い速度(266mph=428km/h)を出せる高速機で、航続距離も長かったのです。ただしこの時代の航空機の進歩は目覚ましいものでしたから、数年後には陳腐化してしまうのですが・・・。
別角度から。ボーリングブロークが生産され始めた1939年には爆撃機としては性能不足になり始めていたので、カナダでは潜水艦の哨戒機や練習機として運用されました。ビクトリア空港はカナダ空軍のパトリシアベイ基地を転用したものですが、同基地にはボーリングブロークを運用する第3運用訓練飛行隊が配置されていました。
この個体は第二次世界大戦後にビクトリアの近くのソルトスプリング島の牧場主が牧場内で使うために購入したもの。主翼は屋根に、尾部はひつじの小屋に、エンジン排気管はいちごの植木鉢に・・・という具合です。1979年に牧場主が博物館に部品を寄贈しました。博物館は同機の復元に着手し、他所から別の胴体を運んできてニコイチしたりボランティアや大学生の手により1996年に復元作業を完了させて現在に至ります。この個体のサブタイプは資料により哨戒機型Mk IVとその練習機型Mk IVTと表記揺れが起きているんですが、ニコイチのせいでしょう。
機首の航法士の窓から。前回説明したMk.7針路設定爆撃照準器っぽい装置がありますね。イギリスの爆撃機はランカスターかウェリントンくらいしか知らんもんですから、ボーリングブローク(ブレニム)は初見なわけです。
航法士席を上から。飛行経路を導く地図やなんやがあって分かりやすい展示になってます。
操縦士席。
尾部の方を見る。
胴体尾部に据えられている回転銃座。銃は7.7mmブローニング機関銃。
機内の座席。
爆弾庫。対潜水艦用の爆雷とかを積んでたんじゃないかしら。
謎筒。爆雷?
ボーリングブロークはカナダに約10機、イギリスに約5機が現存します。ちなみに元になったブレニムはろくな現存機は1機くらいしかいません。イギリスでは消耗してしまってろくに残らなかったのだろうか。
フリート モデル2複葉水上機。この博物館ではこの個体 (CF-AOD) をブリティッシュコロンビア州の航空分野の象徴として扱っています。ブッシュプレーン(Buch plane; 未開地航空機)という分野がカナダにはありにけり。文字通り未開地の資源探査、管理、保護や地形調査、救難救助を目的とする飛行機です。険しい地形を長距離飛行でき、不整地や水面上に短距離で離着陸水できる能力が求められていました。フリート モデル2は実は積載能力と航続距離に難有りの機体だったのですが、1930~1971年の長い間現役でした。引退時はカナダで最も古い現役機でした。
好ましい複葉水上機です。エンジンはキナーK-5 (Kinner K-5) 5気筒空冷エンジン。排気集合管の形状がなんだか独特。
尾翼の表記。
機体構造は胴体が鋼管羽布張り、主翼は木製の骨格に羽布張りです。で、この展示は骨格から羽布張りが出来るまでの模型です。左から右に向かって進行します。1番目は骨格だけの状態です。2番目は主翼前縁と後縁に補強用のアルミニウム板を貼り付けた状態です。ついでに、羽布の布を主翼の助材(リブ)に縫い付ける時の仕事も見せています。3番目は布生地を貼り付けて2番目のように主翼助材に縫い付けます。この展示では「セコナイト生地」を貼り付けて熱を当てて収縮させて固定させた状態です。セコナイト生地 (Ceconite fabric) はポリエチレンテレフタレート、つまりPET系の化学繊維の銘柄です。アメリカではダクロンと共に有名な素材だそうな。この素材は第二次世界大戦後に開発されたもので、それ以前は綿や亜麻布の生地が使われていました。4番目は生地繊維を紫外線から保護するために酸化銀を塗りつけます。最後の5番目は任意の塗料で塗装します。モデル2だと黄色ですね。
余談ですが、羽布張り展示の左にある看板には「All donations are welcome」と書かれていて、つまり「全ての寄付を歓迎します」ということです。この博物館に限らず、館内の至るところに寄付をお願いする掲示がされているのです。ここの運営はボランティアなので人件費はあまり掛かってないと思いますが、それでも固定費や復元費は必要ですしね。日本の博物館も特に小規模なところはこれくらいお金にがめつくてもいいと思うんですよねぇ。経理的なアレがあるかも分かりませんが・・・。
航空博物館の常連、ノースアメリカン ハーバード。ハーバードはイギリス名で、本名はT-6テキサン。弊ブログではもはや説明不要なほど登場している第二次世界大戦時の高等練習機です。よって説明不要。この個体は複数機をニコイチして復元した機体です。ハーバードMk II、Mk IV、AT-6テキサンの部品から構成されています。2012年8月に復元完了したとのこと。
楓印の国籍章なので第二次世界大戦後の形態で復元したのですね。
親の顔より見た練習機。
エンジンカウルですね。
ヒエッ!!エンジンカウルの中で就寝刑(15年)を受けているダイエル(仮名)。
ASGレーダーという対潜水艦用のレーダー。多発機に搭載する装置なので小型です。PBMマリナー、B-25ミッチェル、B-24リベレーター等に搭載されたそうな。
レーダーの受信機。
というところで今日はここまで。
その3へ→
別角度から。ボーリングブロークが生産され始めた1939年には爆撃機としては性能不足になり始めていたので、カナダでは潜水艦の哨戒機や練習機として運用されました。ビクトリア空港はカナダ空軍のパトリシアベイ基地を転用したものですが、同基地にはボーリングブロークを運用する第3運用訓練飛行隊が配置されていました。
この個体は第二次世界大戦後にビクトリアの近くのソルトスプリング島の牧場主が牧場内で使うために購入したもの。主翼は屋根に、尾部はひつじの小屋に、エンジン排気管はいちごの植木鉢に・・・という具合です。1979年に牧場主が博物館に部品を寄贈しました。博物館は同機の復元に着手し、他所から別の胴体を運んできてニコイチしたりボランティアや大学生の手により1996年に復元作業を完了させて現在に至ります。この個体のサブタイプは資料により哨戒機型Mk IVとその練習機型Mk IVTと表記揺れが起きているんですが、ニコイチのせいでしょう。
機首の航法士の窓から。前回説明したMk.7針路設定爆撃照準器っぽい装置がありますね。イギリスの爆撃機はランカスターかウェリントンくらいしか知らんもんですから、ボーリングブローク(ブレニム)は初見なわけです。
航法士席を上から。飛行経路を導く地図やなんやがあって分かりやすい展示になってます。
操縦士席。
尾部の方を見る。
胴体尾部に据えられている回転銃座。銃は7.7mmブローニング機関銃。
機内の座席。
爆弾庫。対潜水艦用の爆雷とかを積んでたんじゃないかしら。
謎筒。爆雷?
ボーリングブロークはカナダに約10機、イギリスに約5機が現存します。ちなみに元になったブレニムはろくな現存機は1機くらいしかいません。イギリスでは消耗してしまってろくに残らなかったのだろうか。
フリート モデル2複葉水上機。この博物館ではこの個体 (CF-AOD) をブリティッシュコロンビア州の航空分野の象徴として扱っています。ブッシュプレーン(Buch plane; 未開地航空機)という分野がカナダにはありにけり。文字通り未開地の資源探査、管理、保護や地形調査、救難救助を目的とする飛行機です。険しい地形を長距離飛行でき、不整地や水面上に短距離で離着陸水できる能力が求められていました。フリート モデル2は実は積載能力と航続距離に難有りの機体だったのですが、1930~1971年の長い間現役でした。引退時はカナダで最も古い現役機でした。
好ましい複葉水上機です。エンジンはキナーK-5 (Kinner K-5) 5気筒空冷エンジン。排気集合管の形状がなんだか独特。
尾翼の表記。
機体構造は胴体が鋼管羽布張り、主翼は木製の骨格に羽布張りです。で、この展示は骨格から羽布張りが出来るまでの模型です。左から右に向かって進行します。1番目は骨格だけの状態です。2番目は主翼前縁と後縁に補強用のアルミニウム板を貼り付けた状態です。ついでに、羽布の布を主翼の助材(リブ)に縫い付ける時の仕事も見せています。3番目は布生地を貼り付けて2番目のように主翼助材に縫い付けます。この展示では「セコナイト生地」を貼り付けて熱を当てて収縮させて固定させた状態です。セコナイト生地 (Ceconite fabric) はポリエチレンテレフタレート、つまりPET系の化学繊維の銘柄です。アメリカではダクロンと共に有名な素材だそうな。この素材は第二次世界大戦後に開発されたもので、それ以前は綿や亜麻布の生地が使われていました。4番目は生地繊維を紫外線から保護するために酸化銀を塗りつけます。最後の5番目は任意の塗料で塗装します。モデル2だと黄色ですね。
余談ですが、羽布張り展示の左にある看板には「All donations are welcome」と書かれていて、つまり「全ての寄付を歓迎します」ということです。この博物館に限らず、館内の至るところに寄付をお願いする掲示がされているのです。ここの運営はボランティアなので人件費はあまり掛かってないと思いますが、それでも固定費や復元費は必要ですしね。日本の博物館も特に小規模なところはこれくらいお金にがめつくてもいいと思うんですよねぇ。経理的なアレがあるかも分かりませんが・・・。
航空博物館の常連、ノースアメリカン ハーバード。ハーバードはイギリス名で、本名はT-6テキサン。弊ブログではもはや説明不要なほど登場している第二次世界大戦時の高等練習機です。よって説明不要。この個体は複数機をニコイチして復元した機体です。ハーバードMk II、Mk IV、AT-6テキサンの部品から構成されています。2012年8月に復元完了したとのこと。
楓印の国籍章なので第二次世界大戦後の形態で復元したのですね。
親の顔より見た練習機。
エンジンカウルですね。
ヒエッ!!エンジンカウルの中で就寝刑(15年)を受けているダイエル(仮名)。
ASGレーダーという対潜水艦用のレーダー。多発機に搭載する装置なので小型です。PBMマリナー、B-25ミッチェル、B-24リベレーター等に搭載されたそうな。
レーダーの受信機。
というところで今日はここまで。
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