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静岡航空資料館に行ってきた話 その2【2018/3/7】

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牧之原市にある静岡航空資料館の続きです。前回に続きエンジン展示です。これはライトR-3350サイクロン18です。2,200馬力、空冷星型18気筒です。これの搭載機としては御存知B-29が有名です。戦後も様々な機種に搭載されていたんですが、製造銘板によればこれのサブタイプは-57型で、この型はB-29Aに搭載されていたんだそうな。


レシプロエンジンの最高峰ですがその分気難しいエンジンで、B-29の搭載エンジンはよく燃えたんだそうな。これもカットモデルにされています。

エンジンプラグに高圧電気を送り込む配電器、横文字でいうところのディストリビューターです。

エンジンシリンダー。後で見る日本製エンジンと比べて放熱フィンがきれいで、ここらへんの工業の基礎はさすがアメリカだなと。交換も割と楽だったようです。シリンダーへの吸気口と排気口が分かりやすくなっているのも素晴らしいです。

あれ、スーパーチャージャーが付いているんですか。てっきりターボチャージャーだけだと思っていたので、これは知らなかった。ただ、主圧縮機はやはりターボチャージャーなのか、スーパーチャージャーは1段2速に留まっています。この頃だと本気出せば2段2速だって出来たでしょうからね。

ここは主制御器だそうな。

ようやく日本のエンジンが出てきました。中島ハ45型です。ハ45というのは陸軍での呼称で、海軍で言うところの誉エンジン。もうネジ1本まで同じ名称は使いたくなかったんだろうな。陸軍の疾風や海軍の紫電改で採用されたエンジンで、日本では数少ない2,000馬力エンジンでありますが、離昇出力でめいいっぱいぶん回して2,000馬力なので、限りなくなんちゃって2,000馬力エンジンに近いものです。ただ、ちゃんと設計通りに生産されて問題なく作動したとしても高性能の過給器と高オクタン価ガソリンを日本は持ち合わせていなかったのでこれでアメリカ軍の機体と渡り合えたとも思えず、どの道詰んでたと思います。

放熱フィンはアメリカのと比べるとちょっと雑な感じ。ただしこのエンジンは中島の飛行場に埋め捨てられていたのを掘り起こしたやつなのでその時の劣化は多少あるでしょう。

第二次世界大戦後の時代になりました。これはコンチネンタルO-470-11型です。空冷水平対向6気筒、210馬力です。セスナ機みたいな軽飛行機によく載っているエンジンです。これは自衛隊のL-19連絡機用に使っていたそうな。これは1958年に富士自動車(これはスバルの方)がライセンス生産した第1号で、長年耐久試験に供されていたそうです。この富士自動車、水平対向エンジンのことだからスバルのことだろうとずっと思っていたんですが、今回改めて調べるとぜんぜん違う会社なのでした。ややこしい・・・。どこの会社だと思ったら、例のフジキャビンを生産していた会社でした。当然現在は消滅した会社で、最終的にコマツに吸収されたそうです。

ライカミングTIO-540-R2AD型です。ターボ付き空冷水平対向6気筒、340馬力です。搭載機種は多すぎるんで割愛しますが、富士重工が先祖返りしてアメリカのロックウェルと共同開発したモデル700(ロックウェルではFA-300)が搭載したエンジンもこれです。
このエンジンからプロペラも展示されていて、これはハーツエルHC-B3TN-5です。プロペラについては何も分からないので名前だけ書いて終わりにします。

ターボチャージャーは後部にあります。

少し下から。ベルトで繋がっているのはなんかしらの発電器でしょうかね?

エアリサーチTPE331-1-151A型。製造初年1963年のターボプロップエンジンで、ようやくガスタービンエンジンの時代へ。タービン軸の回転を減速機を介してプロペラ軸の回転に回しています。なので、タービン軸とプロペラ軸は同軸上ではない場合が多いです。これもそう。ジェットエンジンの仲間に入るので、だったらジェット噴流で飛べよとなるんですが、高速向き、高高度向きでない機体に載せるエンジンの場合ターボプロップの方が効率が良いのだそうな。このエンジンの採用例としては三菱MU-2が日本では知られているかと。その他多数。

反対側。

コンチネンタルIO-470L型。空冷水平対向6気筒、260馬力です。今見たO-470-11型と同型ですが、これは燃料噴射装置を追加した型式です(型番の"I"は燃料噴射装置付を示す)。燃料噴射装置を付けたのでキャブレターは無くなってるんじゃないかしら・・・見ただけじゃわからないですけど。でもまあ普通のO-470とは見た目が結構変わっています。

ロールスロイス・ダーウェントMk.V型です。遠心圧縮式ターボジェットエンジンです。初期のターボジェットエンジンで、ドイツに数週間の差で世界初の実用ジェット戦闘機の称号を逃したイギリスのミーティアに搭載されていたものです。遠心圧縮式は、羽根車で取り入れた空気を遠心力で圧縮するもの。この圧縮空気を燃料と混合させて燃焼させれば高温高圧ガスとなって後方へ噴射され推進力となります。さらにガス噴射する際にタービンを回転させてそれを羽根車の回転に再利用しています。

こっちが吸気口。遠心圧縮式のカットモデルは未だ見たことがありません。どこかに置いてありませんかね。
ここまでで気づいた方もいるかもですが、遠心圧縮式はスーパーチャージャーの機構と似ている部分が多いです。初期のジェットエンジンが遠心圧縮式ばかりだったのはスーパーチャージャーの技術が応用できるというのもあったのかも。ただし圧縮効果を高めるために羽根車の直径をデカくしなければならんという欠点があります。そうすると戦闘機の断面が大きくなってイカンのです。遠心圧縮式を胴体内に載せたF-86やMiG-15なんかは、意外と胴体が太いんです。よって性能向上には限界があり、しばらくすると軸流圧縮式に取って代わられるのでした。

その軸流圧縮式、アリソンJ35型です。アメリカ初の軸流圧縮式ターボジェットエンジンで、主にF-84、F-89、B-47に搭載されていました。特にB-47は1機に付き6発のエンジンを載せるので、B-47の大量生産もあってエンジンもやたら造られました。遠心圧縮式よりも全長が長いですが前面面積が小さいので機体を小さく出来ます。この点が買われて遠心圧縮式に代わってジェットエンジンの主力になりました。今はターボファンエンジンが主力ですが、ここには展示されていないので今回はそこまで書きません(手抜き)
ちなみになんでこれだけガラス張りになっているかというと、軸流圧縮機の部分が動くような展示になっているからです。でもここでは動かせるような状態ではなかったです。

吸気口は左側。

これが軸流圧縮機。このやたら羽根の付いた羽根車が回転して空気を後ろに押し込めながら圧縮していきます。ただし1段の羽根車はあまり圧縮させないのでいくつもの羽根車を重ねています。J35の場合は11段です。

圧縮された空気は缶型燃焼器に送り込まれて高温高圧ガスになって後方へ噴射されます。缶型燃焼器は複数の筒状燃焼器を輪形に配置したものです。これは遠心圧縮式でよく見られるものです。J35はアメリカ初の軸流圧縮式ということで、ここらへんの設計はまだ遠心圧縮式のものを引きずっていたように見えます。ただ缶型燃焼器は、缶同士の間の空間が無駄になるとか製造の手間もかかるとか、欠点もありました。後年のジェットエンジンでは断面がドーナツ型のアニュラ型燃焼室を採用することが主だそうで。こう見ていくと意外と少しずつ発見があるな。

んで、排気口からガスを噴出する前に軸流タービンで軸流圧縮機を回すエネルギーを回収します。
というところで今日はここまで。

その3へ→

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