カナダ軍用機歴史博物館の続きです。引き続き屋外展示を見ます。これはカナディアCF-104スターファイター(1954年初飛行)です。悪夢のセンチュリーシリーズのうち、よく分からん戦闘機2種のうちのひとつ、ロッキードF-104をカナディアがライセンス生産したものです。カナダ空軍は200機の単座型と38機の複座型を採用しました。カナダ空軍の運用したCF-104は、G型に相当する機種です。F-104Gにということです。つまり、CF-104は欧州に展開するカナダ空軍による核攻撃機として運用されとったわけです。F-104は戦闘爆撃機には不向きな飛行機なものですから、西ドイツ軍同様多数の事故機を生み出してしまうのです。就役中に喪失したCF-104は110機にのぼり、実に半数近くが事故で失われたことになります。パイロットも37名殉職しており、ロッキードの開発者もこれでは天国に行けないでしょう。ただ、CF-104の前任のF-86よりも事故の発生件数と殉職者数は少ないからそれよりはマシだよ、という話も有りにけり。
CF-104は、本土の訓練部隊を除いて欧州に配備されていました。この個体もそうで、西ドイツに展開していた第439飛行隊セイバートゥースに配備されていた機体です。虎柄の派手な機体は、NATO加盟国の合同演習「タイガーミート」に参加した時の塗装です。タイガーミートに因んで各国が工夫をこらした虎柄の特別塗装機で参加することが多々あります。これもその時の特別塗装というわけです。
全身を虎柄に塗る機体は珍しいです。大抵は垂直尾翼だけを虎柄にします。全身虎柄はよく目立つので、プラモデルや完成品模型でもよく題材にされてます。この虎柄CF-104も過去にハセガワがプラモデルで発売していました(今は絶版)。
F-104の翼端にはチップタンクという増槽をつけた状態がデフォですが、この個体はチップタンクを外した状態です。せっかくなので少し見ておきましょう。なんといってもこの薄い主翼です。こんなんで離陸できるんかいと思うんですけども、実はフラップはもちろん主翼前縁も折り曲がるようになっていて、見かけ上はそれなりに主翼に厚みを持たせることができるらしいです。
うしろ。
マクドネルCF-101Bブードゥー(1954年初飛行)です。これもセンチュリーシリーズのひとつで、よく分からん戦闘機のうちのもう1種です。カナダ空軍、よりによって開発目的がよく分からん戦闘機を2機種すべて採用している稀有な空軍です。どうして・・・。開発中止となってしまった国産迎撃機アブロカナダCF-105アローの穴埋めにアメリカから購入した戦闘機です。この頃だと新型の火器管制装置を積んだF-102がアメリカで就役しているはずなんですが、それを入れなかったのはF102に禁輸措置でも発動したのか、カナダのド田舎だと地上のレーダー網装置が無いので接続することが出来なかったのか・・・。
センチュリーシリーズの中では唯一の双発機です。エンジン排気口の上から後ろに長く伸びた尾翼部なんてのは、後のF-4ファントムでも見られる形状です。マクドネルに戦闘機を作らせるとこうなるんだよという文法めいたものを感じます。なお、迎え角を取るとそのまま機種上げが止まらなくなり、最悪エンジン停止という大欠陥を持っていました。水平安定板が悪かったのか、F-4では位置が変わっていますね。ちなみにその操作上の癖の解決方法は機首上げしないで真っ直ぐ飛ぶという、曲がりなりにも戦闘機に取らせる対策ではありませんでした。
細かいところの観察。脚庫でござい。
主翼はそんなに広くない印象です。この時代のカナダ空軍機は、胴体の稲妻上のストライプがかっこいいんですよね。
機首は太め。ここらへんもなんとなくF-4っぽさを感じるところです。
CF-101Bの兵装は胴体の爆弾倉に搭載するんですが、蓋に半埋込式のような具合で搭載するようになっています。ミサイル2発を撃ち尽くすと、蓋が半回転して、裏側に仕込んであったもう2発のミサイルがコンニチワするという。他には見られない方式。省スペース化にはつながると思いますが、他にあまり利点がなかったんでしょうかね、以後には繋がりませんでした。なおこれに写っている兵装はAIR-2ジニー核ロケット弾ですね。ひえー。誘導弾ではないのでロケット弾です。目標に対して多少狙いを外しても核爆発起こすんだからイチコロじゃよ、という雑な論理です。
反対側にはAIM-4ファルコンミサイルがいました。
ミサイル取付部はこういうようになっているよ。
操縦席はこんな感じだよ。
カナディアT-33ANシルバースター(1948年初飛行)です。御存知ジェット練習機の常連ロッキードT-33のライセンス生産版です。ということで機体説明は割愛。カナディアで生産したT-33ANは、ジェットエンジンをアリソンJ-33に代えてロールスロイスのニーン10を搭載しました。これはJ-33よりも強力な出力を出すものでした。また、本家ロッキードではシューティングスターという名前で親しまれますが、カナダではシルバースターと呼んでいました。この個体は、曲技飛行部隊「スノーバード」の支援機として運用されていた機体でした。白無垢の塗装が特徴であり、2022年現在はその仕様に復元されているようです。
ノールダイン・ノースマンMk.V(1935年初飛行)です。カナダで開発された未開地用航空機「ブッシュプレーン」のひとつです。滑走路などが整備されていないカナダ北部の未開地でも運用できるよう頑丈な機体構造とされ、降着装置も車輪、水上用フロート、スキー板のどれかを選択可能で交換も容易な設計でした。第二次世界大戦が始まってカナダ空軍やアメリカ陸軍から大量の発注が入ったことによって、最終的な生産数は900機程度になりました。中小メーカーのブッシュプレーンとしては成功した機数と言えるんじゃないでしょうか。この個体は、1950年にカナディアン・カー&ファウンドリー社で製造されたもので、ブリティッシュコロンビア州の林業会社で働いていました。その後東部の会社に何社か転職して2015年に当館に寄贈されて現在に至ります。まだ寄贈されて日が経っていないです。これも当然のように飛行可能です。
博物館の敷地外というか空港の敷地内には、UPS航空のエアバスA300-600F (N154UP)が止まっていました。前にも書きましたがこの博物館はハミルトン空港に隣接する形で立地しているので、博物館のすぐ隣は空港なのです。ハミルトン空港はトロント近郊にあり、トロント・ピアソン空港のセカンダリー空港としての役割があります。特にトロントにおける貨物機の一大拠点となっている模様。UPSは、国際貨物会社ですね。FedExやDHLみたいなものです。UPSの機材もA300も、ここで目撃したのが初めてでしたので、実は収穫がある一幕なのでした。
というところで今日はここまで。
その16へ→
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CF-104は、本土の訓練部隊を除いて欧州に配備されていました。この個体もそうで、西ドイツに展開していた第439飛行隊セイバートゥースに配備されていた機体です。虎柄の派手な機体は、NATO加盟国の合同演習「タイガーミート」に参加した時の塗装です。タイガーミートに因んで各国が工夫をこらした虎柄の特別塗装機で参加することが多々あります。これもその時の特別塗装というわけです。
全身を虎柄に塗る機体は珍しいです。大抵は垂直尾翼だけを虎柄にします。全身虎柄はよく目立つので、プラモデルや完成品模型でもよく題材にされてます。この虎柄CF-104も過去にハセガワがプラモデルで発売していました(今は絶版)。
F-104の翼端にはチップタンクという増槽をつけた状態がデフォですが、この個体はチップタンクを外した状態です。せっかくなので少し見ておきましょう。なんといってもこの薄い主翼です。こんなんで離陸できるんかいと思うんですけども、実はフラップはもちろん主翼前縁も折り曲がるようになっていて、見かけ上はそれなりに主翼に厚みを持たせることができるらしいです。
うしろ。
マクドネルCF-101Bブードゥー(1954年初飛行)です。これもセンチュリーシリーズのひとつで、よく分からん戦闘機のうちのもう1種です。カナダ空軍、よりによって開発目的がよく分からん戦闘機を2機種すべて採用している稀有な空軍です。どうして・・・。開発中止となってしまった国産迎撃機アブロカナダCF-105アローの穴埋めにアメリカから購入した戦闘機です。この頃だと新型の火器管制装置を積んだF-102がアメリカで就役しているはずなんですが、それを入れなかったのはF102に禁輸措置でも発動したのか、カナダのド田舎だと地上のレーダー網装置が無いので接続することが出来なかったのか・・・。
センチュリーシリーズの中では唯一の双発機です。エンジン排気口の上から後ろに長く伸びた尾翼部なんてのは、後のF-4ファントムでも見られる形状です。マクドネルに戦闘機を作らせるとこうなるんだよという文法めいたものを感じます。なお、迎え角を取るとそのまま機種上げが止まらなくなり、最悪エンジン停止という大欠陥を持っていました。水平安定板が悪かったのか、F-4では位置が変わっていますね。ちなみにその操作上の癖の解決方法は機首上げしないで真っ直ぐ飛ぶという、曲がりなりにも戦闘機に取らせる対策ではありませんでした。
細かいところの観察。脚庫でござい。
主翼はそんなに広くない印象です。この時代のカナダ空軍機は、胴体の稲妻上のストライプがかっこいいんですよね。
機首は太め。ここらへんもなんとなくF-4っぽさを感じるところです。
CF-101Bの兵装は胴体の爆弾倉に搭載するんですが、蓋に半埋込式のような具合で搭載するようになっています。ミサイル2発を撃ち尽くすと、蓋が半回転して、裏側に仕込んであったもう2発のミサイルがコンニチワするという。他には見られない方式。省スペース化にはつながると思いますが、他にあまり利点がなかったんでしょうかね、以後には繋がりませんでした。なおこれに写っている兵装はAIR-2ジニー核ロケット弾ですね。ひえー。誘導弾ではないのでロケット弾です。目標に対して多少狙いを外しても核爆発起こすんだからイチコロじゃよ、という雑な論理です。
反対側にはAIM-4ファルコンミサイルがいました。
ミサイル取付部はこういうようになっているよ。
操縦席はこんな感じだよ。
カナディアT-33ANシルバースター(1948年初飛行)です。御存知ジェット練習機の常連ロッキードT-33のライセンス生産版です。ということで機体説明は割愛。カナディアで生産したT-33ANは、ジェットエンジンをアリソンJ-33に代えてロールスロイスのニーン10を搭載しました。これはJ-33よりも強力な出力を出すものでした。また、本家ロッキードではシューティングスターという名前で親しまれますが、カナダではシルバースターと呼んでいました。この個体は、曲技飛行部隊「スノーバード」の支援機として運用されていた機体でした。白無垢の塗装が特徴であり、2022年現在はその仕様に復元されているようです。
ノールダイン・ノースマンMk.V(1935年初飛行)です。カナダで開発された未開地用航空機「ブッシュプレーン」のひとつです。滑走路などが整備されていないカナダ北部の未開地でも運用できるよう頑丈な機体構造とされ、降着装置も車輪、水上用フロート、スキー板のどれかを選択可能で交換も容易な設計でした。第二次世界大戦が始まってカナダ空軍やアメリカ陸軍から大量の発注が入ったことによって、最終的な生産数は900機程度になりました。中小メーカーのブッシュプレーンとしては成功した機数と言えるんじゃないでしょうか。この個体は、1950年にカナディアン・カー&ファウンドリー社で製造されたもので、ブリティッシュコロンビア州の林業会社で働いていました。その後東部の会社に何社か転職して2015年に当館に寄贈されて現在に至ります。まだ寄贈されて日が経っていないです。これも当然のように飛行可能です。
博物館の敷地外というか空港の敷地内には、UPS航空のエアバスA300-600F (N154UP)が止まっていました。前にも書きましたがこの博物館はハミルトン空港に隣接する形で立地しているので、博物館のすぐ隣は空港なのです。ハミルトン空港はトロント近郊にあり、トロント・ピアソン空港のセカンダリー空港としての役割があります。特にトロントにおける貨物機の一大拠点となっている模様。UPSは、国際貨物会社ですね。FedExやDHLみたいなものです。UPSの機材もA300も、ここで目撃したのが初めてでしたので、実は収穫がある一幕なのでした。
というところで今日はここまで。
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