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ビクトリアの航空博物館を見学する 前編 【2015/01/17】

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ビクトリア国際空港に隣接して、航空博物館があるという話を得ましたので、そこを訪れることにしました。
ビクトリアのダウンタウンからバスで行くには、70X/72系統に乗って途中で81/88系統などに乗り換えて行くのが早いのですが、今回は75系統に乗って普段は通らない経路で行ってみることにしました。
ちなみにダウンタウンからブッチャートガーデンに行くにはこのLFSの75系統に乗ります。



途中でSOM28Dの83系統に乗り換えます。BC Transit公式では乗り換え地点とは言われていませんが、普通に出来ます。場所はWest Saanich & Wallaceです。



博物館最寄りのバス停で降りて、はい着きました。ブリティッシュコロンビア航空博物館British Columbia Aviation Museumです。



博物館のハンガー内にこのように機体が保存展示されています。第一次大戦から第二次大戦後しばらくあたりまでの機体を中心に収蔵しています。



Royal Aircraft Force "SE-5"
第一次大戦期のイギリス軍の戦闘機および偵察機。非常に頑丈な構造をしていて、安定性や操縦性も高く、制空権確保に貢献した名機。エドワード・マノック、アルバート・ボール、ジェームス・マッカデンなどのエースパイロットもSE-5に搭乗した。
当機はデニス・ミッチェル作の7/8スケールレプリカで、本来の液冷エンジンではなく空冷エンジンを搭載している。

バンクーバーの航空博物館でも見た第一次大戦期のイギリス軍戦闘機ですね。これもレプリカ。



Nieuport 17
第一次大戦期のフランス軍戦闘機。ニューポール11の発展型で、110馬力ロータリーエンジンを搭載する。カナダのエースパイロット、ビリー・ビショップもこの機体で大戦果を挙げた。
この機体も7/8スケールのレプリカである。

四角い胴体に丸いエンジンカウルというのはアンバランスですな。



Eastman "Sea Rover"
アメリカ・デトロイトのトム・トーレとジム・イーストマン設計の飛行艇。総生産数は18機。
当機は現存する唯一のシーローバーで、フォート・セント・ジョンで発見され、他の部品もダンカン近郊で手に入れた。

羽の付いたカヌーです。だったら漕げばいいアレと違って大きさ的にもカヌーサイズ。
翼が3枚付いているようです。三葉機というのは珍しいな。



Fleet "Model 2"
BC州で開発された航空機のひとつ。地形の測量調査や救難救助に使われた。1971年に引退した当時、現役の航空機の中ではカナダ最古の機体だった。

水上機。羽の付いたカヌーではない。



Bristol "Bolingbrole Mk.IV"
イギリスの爆撃機「ブレニム」の発展型。ケベック州のフェアチャイルド飛行機で製造され、1936年に試作機が初飛行した。最高速度は戦闘機とほぼ同じ266mphで、当時としては先進的な機体だった。運用訓練隊や対潜哨戒隊などで活躍した。
博物館の機体9104は、ソルトスプリング島の牧場主が機体を分解し物置の屋根や羊小屋、いちご畑に使っていたものを回収・修復した。



Avro "Anson Mk.II"
アブロの双発機。輸送機・偵察機としての性能をイギリス空軍に見込まれ、その用途の多様さから「忠実なアニーFaithful Annie」と呼ばれるようになった。第二次大戦時には旧式化していたが訓練機としては人気があり、カナダ空軍でも使用されたほか、数機は輸送機・測量機としてカナダ北部で1969年まで使用されている。
当機はフォート・セント・ジョンで入手したもので、この機体で訓練をした兵士への敬服の意を込め訓練機時代のマーキングが施されている。

やっぱり訓練機は黄色いんだなっていう。



日本陸軍 「ふ号兵器」
旧日本陸軍が開発・実戦投入した風船爆弾。「ふ号」とはその暗号名である。日本から爆弾をぶら下げた気球をジェット気流に乗せてアメリカ本土まで飛ばして直接攻撃するというもの。言うと簡単だが実際は難しいもので、海上で風船が高度を下げて落ちたり風船が割れたりしないように色々工夫が施されている。
3万フィートまで上昇した風船爆弾は、その後高度や水素圧が下がるのを検知するとバラストを解放し高度を保つ。3日間で北米大陸に到達し、タイマー作動により5kg焼夷弾4発と15kg対人爆弾1発を投下する。また、風船の気嚢は点火して焼却され、その機密が暴かれないようになっている。
結果、北米大陸に到達したが、一般市民6名の犠牲者や原子爆弾の製造工場を一時停電、小規模な山火事を発生させるなど、直接的戦果は微々たるものだった。しかし、心理的効果は大きかったようで、日本軍へ戦果を察知されないために報道管制を敷いたり爆弾ではなく生物兵器での攻撃への恐れから風船爆弾撃墜のためにリソースを使ったり、間接的な戦果や結果は上々だったようだ。

本来はアメリカを攻撃するためのものだが、無誘導で運任せの兵器であるためカナダにも落着した。9300発の風船爆弾が日本で打ち上げられ、そのうち約10%が北米に到達、うち約300発がカナダのブリティッシュコロンビア州、アルバータ州、サスカチュワン州、マニトバ州に落着したことが確認されている。
1944年後半、これを脅威と認識したカナダは、空軍のパトリシアベイ基地に風船爆弾探知のためのレーダー基地を建設、および風船爆弾を迎撃するために空軍の第133航空隊(P-40キティホークで編成)を配置した。高高度を高速で移動する風船爆弾は撃墜するのが困難だったという。

長々と書きましたが今回、一番目を引いた展示物です・・・。寝耳に水でした。まさかあのビックリドッキリメカ風船爆弾をお目にかかれる日が来ようとは!さすがに気分が高揚します。
カナダの山中で発見された本物です。計器や爆弾ラッチのある本体だけが見つかって、気球部分はなかった模様。前述のとおり自爆処分されたのやもしれません。爆弾やバラストはフェイクです。他の保存例は、アメリカのスミソニアン航空宇宙博物館が有名。あとカナダでもう一箇所でこれに邂逅するわけですがそれはまた後のお話。ちなみに日本での現存例はなし。いつもの日本では保存されてないけど外国にはあるよというパターンです。



配線類かな。発想は単純ですが、兵器自体は結構複雑なのでよく分からないです。ちなみに風船爆弾は史上初の大陸間兵器、第二次大戦時で最長の到達距離を持った兵器、実戦で使用された兵器の中で最長の攻撃距離を持つ兵器といういくつもの栄誉(?)を持っています。見かけによらず意外にすごいのだ。惜しむらくは、これから発展した兵器や技術が以降登場しなかったということかな。開発の系譜はこれっきりで続かなかったのだ・・・。

ちなみにカナダでのこれの迎撃基地となったパトリシアベイ基地は、現在のビクトリア国際空港だったりします。元は後方の訓練基地だったようですが、風船爆弾来襲によって一気に本土防衛の前線となってしまったわけです。
ビクトリア空港って地方空港の割に滑走路が3本もあってなんか過剰だよな~と前から思っていたんですが、元は軍事基地だったと分かると腑に落ちるところがありますね。
それにしても、アメリカでの戦況はよく聞きますが、アメリカのとばっちりを受けたカナダの戦況も知れたのは収穫でした。本当カナダにとっちゃいい迷惑です・・・。被害らしい被害がなくて良かったですが。



Douglas A26 "Invader"
第二次世界大戦後半に登場した双発の軍用機。強力なエンジンによりあらゆる場面で使われ、第二次大戦後も朝鮮戦争やベトナム戦争でも活躍した。
博物館の保存機は、コンエアにより消防機に改造された機体で、現在もその形態で保存されている。

消防機シリーズ。バンクーバーでも別の機体を基にした消防機を見ましたね。



"Quickie"
世界で初めて無着陸・無給油で世界一周飛行を成し遂げたバート・ルータン設計によるホームビルト機。機体は発泡スチロールとファイバーグラスの外板で構成されており、重量は113kgほど(2500pounds)しかない。

ビックリドッキリメカかな?一応複葉機らしいが、まだ下の翼はカナード翼と言ってくれたほうがしっくりくるけどな。いや、カナードでも無理があるけど。
ホームビルト機なので、お家でも作ることが出来ます。・・・とはいえなあ。こんなんでも飛ぶんだもんな。

次回は2つ目のハンガーへ向かいます。


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