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北米project 5 ~How do you like Canada? その49【2016/6/15~22】

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今回は民間航空機の回です。これは、トラベルエア・モデル2000 (Travel Air Model 2000) です。1925年初飛行(モデル1000)。1930年に生産を終えるまでに1550機を受注しました。当時としては大ヒットでしょう。工芸品のような作り方だった当時の航空機製造でこれだけの数、どうやってさばいたんでしょう。フォッカーD.VIIと外観が似ているから1920~1930年代の戦争映画でよく役者として出演していたそうな。ちなみに、これの設計にはウォルター・ビーチ、クライド・セスナ、ロイド・ステアマンが携わりました。はい、それぞれビーチ、セスナ、ステアマンの航空機製造会社の創立者なのです。名機になるべくしてなったといえましょう。

この個体は1929年製で、オンタリオ州キングストンの企業が購入しました。1941年に使用停止するまで複数のオーナーをわたりました。その間に当局への届け出無しにエンジンを交換して馬力アップしていたそうな。違法改造ですよそれ。1958年に個人が購入して1968年に博物館へ寄贈、1999年から12年かけて復元して今に至ります。

これは、デ・ハビランドD.H.83Cフォックスモス (De Havilland D.H.83C Fox Moth) です。1932年初飛行。タイガーモスなどを生み出したイギリスのデ・ハビランド社の航空機です。単発複葉機の小型機ですが人員輸送用の旅客機です。よく見るとエンジンと操縦席の間に客室があります。重心の都合、客室はそこしかなさそうですが、狭そうなのとエンジンの熱で暑そうだなと。カナダでは第二次世界大戦後にブッシュプレーンとして使われたそうな。デ・ハビランドのモスシリーズの名前だし、型番も1つ違いだしでということで設計はタイガーモスとほとんど共通にしてあります。実際輪郭が似ていますしね。この個体は1947年にカナダで作られてブッシュプレーンとして使われた機体です。ていうことはデ・ハビランド・カナダ製ですかね。1980年代に個人が購入して、最初のフォックスモスの塗装に復元したんだそうな。

デ・ハビランドD.H.60Xシーラスモス (De Havilland D.H. 60X Cirrus Moth) です。1925年初飛行。軍隊はもちろん、民間飛行クラブや個人でも購入・運用ができる安価な航空機として広く普及した機体です。同社のモスシリーズの始祖でもあります。1928年からはデ・ハビランド・カナダでも生産を始めました。1930年代にはカナダで最も登録数の多い機種になって、個人飛行の普及に貢献しました。カナダ空軍でも練習機として採用されパイロット内で操縦したことない人はいないくらいの普及率でした。この個体は1928年イギリス製です。製造後にカナダに輸入されました。モスの中でも極初期型のシーラスモスです。1962年に博物館に寄贈されて、DHCの元社員が復元しました。ちなみにD.H.60のエンジンは生産時期により変わっていて、最初はシーラスエンジン、その後ジェネット、ジプシーの順に変わっていくようになります。この個体はシーラスエンジン装備なのでシーラスモスと呼ばれるわけです。

アブロ・アビアンIVM (Avro Avian IVM) です。1926年初飛行。民間用スポーツ機として開発された軽飛行機です。デ・ハビランドのD.H.60モスの競合機といえます。この個体の型番IVMはIV型のMという読み方をして、Mは胴体の骨格に鋼管を使用していることを表しています。ふつうは木製になりますね。この個体は1930年にカナダ空軍に納品された機体ですが、カナダ空軍ではこれ以外にも導入したアビオンをほとんど使用しないまま民間に放出してしまったようです。この個体は1932年に民間の飛行クラブへ譲渡されています。その後いくつかのオーナーを転々として1968年に当館へ寄贈されています。

金属製のプロペラはこの時代にしては珍しいような感じもします。どこかの段階で交換されたんでしょうか。エンジンは、アームストロング・シドレー・ジュネット・メジャー、100馬力、空冷星型7気筒です。

この手の軽飛行機に折りたたみ式の主翼が見受けられるのは、格納庫での収納性や陸上輸送での可搬性を考慮してのことです。特に折り畳めるおかげでガレージにも入れられたんだそうな。

デ・ハビランドD.H.80Aプス・モス (De Havilland D.H. 80A Puss Moth) です。1929年初飛行。3人乗りの単葉単発機です。燃費の良さが売りで、2点間の長距離飛行の記録破りによく使われたんだそうな。単葉機なのと密閉式のコックピットがうまく作用したんだと思います。カナダでは9機が輸入された他、DHCでも25機現地生産されました。前作D.H.60とはエンジンを載せたときの向きが上下逆になっています。コックピットからの視界を良くするのと、エンジンから漏れ出るオイルが風防に付着するのを防ぐためだと言われています。この個体は1931年イギリス製で、ロンドンのアメリカ海軍武官が使っていました。第二次世界大戦も経験していて、イギリス空軍で運用されていました(たぶん連絡機として使用)。戦後はイギリスの民間企業を転々として、1969年にカナダ空軍の軍人が個人で購入、カナダへ運ばれました。1976年にその人が軍を退役すると当館に売却しました。いま現存するプス・モスは8機いて、これはカナダで唯一飛行が認可されている機体だったそうな。

ステアマン4EMシニア・スピードメール (Stearman 4EM Senior Speedmail) です。1929年初飛行。R-1340ワスプSC、450馬力星型9気筒。4Eジュニア・スピードメールの改良型として開発された郵便用航空機です。郵便機とも言いますね。1920年代の航空機はまだ貨物輸送や旅客輸送に使うには積載能力が不足していたか運賃が非常に高額になるかで、まだ使い物になる物ではありませんでした。そんな中で、重量が軽くなおかつ従来の陸上海上交通よりも優位な速達性を得られる郵便物の輸送が当時の航空機には適していたのです。

4EMは、エンジンにNACAカウルを装着した初期の機体です。今から見れば別に普通じゃんという形状ですが、当時は画期的な発明だったのです。これによって気流が整えられて空気抵抗低減とエンジン冷却能力向上に寄与しました。

イギリスの郵便事業者であるロイヤルメールのマーキング。カナディアン航空に委託して運んでいたようですね。この個体は1930年にモデル4Eとして生産された個体で、スタンダード石油社に社用機として納品されました。1940年代に農薬散布機に改造されて、1965年にオンタリオ州の個人が購入してカナディアン航空仕様のモデル4EMとして復元しました。1970年に郵便輸送として飛行しながら当館へ寄贈されて今に至ります。

カーチスのなんかしらの液冷エンジン。型式を覚えていません。銘板は記録し忘れているし。

ロッキードL-10Aエレクトラ (Lockeed L-10A Electra) です。1934年初飛行。R-985ワスプジュニア、450馬力星型9気筒2発。エレクトラって飛行機は2つあるねん。よく知っているL-188エレクトラは2代目なんですねー。乗員2名、乗客10名乗りの双発旅客機で、ロッキード初の全金属製航空機です。ダグラスDC-2、ボーイング247が競合として挙げられています。カナダでは1936年にエア・カナダが2機発注し、バンクーバー~シアトル線に投入。1937年にはトランス・カナダ航空も5機発注。さらに第二次世界大戦ではカナダ空軍が民間機を徴用して輸送機として使用しました。


エレクトラにはちょっとした小芝居が挟まれています。機首の扉を開けて中に荷物を詰め込んでいます。中身は郵便物ですね。1930年代後半の民間機なので航空機用レーダーはまだ存在していないわけです。1920年代は郵便専用航空機も開発された時代でしたが、1930年代からは機体も大型化して搭載量にも余裕が出てきましたから、旅客と郵便を混載して飛行できるような機体も出てきたのです。この流れは拡大していって、次第に郵便専用機というのは淘汰されていくのです。

この個体は1937年にトランス・カナダ航空が新造機として発注した機体です。1939年から6年間カナダ空軍に徴用されていた時期もありました。1962年に個人が購入して修復して世界中を飛行したそうな。最後はエア・カナダが購入して当館へ寄贈しました。なんでエアカナダが購入したかというと、トランスカナダ航空の社名変更後がエアカナダなので実質的に同じ会社でということです。余談ですがトランスカナダ航空 (TCA) の親会社はカナディアン・ナショナル鉄道 (CNR) です。そうつまり、鉄道会社それも国有鉄道(当時)が運営する航空会社という構図なのです。さらにカナダのフラッグキャリアとして政府の保護もありにけり。戦後の旅客航空の発展に伴ってTCAの路線網も拡大、それはつまりCNRの旅客鉄道と真っ向から競合することになり、最終的にCNRの旅客輸送はほぼ壊滅状態となるわけです。

ボーイング247D (Boeing 247D) です。1933年初飛行。乗員2名、乗客10名乗り。S1H1-Gワスプ550馬力星型9気筒が2発。この頃のアメリカの双発旅客機はボーイング247、ロッキードエレクトラ、ダグラスDC-2/3がしのぎを削っていましたが、その中で先陣を切ったのがボーイング247です。先行有利が働けばよかったんですが、この機体には色々弱点が合ったので後発のロッキードとダグラスに遅れを取ってしまい、75機しか製造されずあまり売れませんでした。技術的には先進技術を多く取り入れています。全金属製応力外板、低翼主翼、引込式着陸装置、主翼前縁配置のエンジン、可変ピッチプロペラ、過給器、トリムタブ、客室空調装置など。特に双発プロペラ旅客機の外観設計を決定づけた機体と言われていて、エレクトラもDC-3もこれの後追いに過ぎないともいえます。

主にアメリカのユナイテッド航空から発注された機体が多いです。ユナイテッド航空はもともとボーイング社の航空機運行部門を分社化したものなので、ボーイングとの結びつきがとても強いのです。これも初めはユナイテッド航空に納品され、カナダ空軍、カナダ太平洋航空などを渡り歩いて最後はカルガリーのカリフォルニア・スタンダード石油社が使用しました。1967年に同社が当館へ寄贈しています。247は全部で4機しか現存していないため、貴重な機体であります。

胴体は細いです。空力を考慮した影響でしょう。10人乗りなので窓一つにつき1席という具合でしょう。左右の主翼は桁で繋がっていますが、桁が機内の床をブチ抜いているので乗客はこれをまたいで席まで向かう必要があり247の弱点でした。機体の収容力を増やそうにもこの桁の再設計が面倒だったのとエンジンの出力が弱かったので実現できなかったそうな。

ダグラスDC-3 (Douglas DC-3) です。1935年初飛行。乗員2名、乗客21名(最大32名まで)。R-1830ツインワスプ1200馬力星型14気筒。ご存知、双発プロペラ旅客機の覇権を握った機体です。DC-2の派生型としての開発でしたが、すぐにこっちの方が有名になりました。ダグラス純正の機体だけで約11,000機、日本とソ連でライセンス生産されたものもいれると約16,000機も作られました。現在も200機くらいが現役として登録されているそうな。もともとダグラスがボーイング247の対抗馬として開発したのがDC-2です。DC-1というのもありますがこれは1機だけ製作された試作機です。この時の設計者があのキンデルバーガー氏やノースロップ氏です。DC-2が好評だったので、鉄道のようなプルマン寝台を備えた旅客機として使えるように胴体を大型化したのがDC-3なわけです。それでDC-3を普通の座席に座る旅客機として使えば、DC-2の1.5倍もの乗客を運べるのに運航コスト増加は僅かという高い利益率から、政府の補助金無しで運航できる旅客機として1939年の世界の航空取引の90%を占めるまでに大ヒットを記録しました。その後始まった第二次世界大戦では軍用輸送機としても大量生産されました。生産数の殆どは軍用機としての発注です。

外部電源供給用バッテリー台車です。機体が駐機時にエンジン停止中でも機内に電力を供給するための装置です。現代でも普通にありますね。

この個体は1942年に旅客機として製造された機体です。ただしこの時アメリカは日本に横っ面を張り倒されて第二次世界大戦に引きずり込まれてしまったため、すでに戦時体制。旅客機として使われることはなく、即陸軍に徴用されてしまいました。C-49Jとして軍人生活を送ったのです。ちなみにDC-3の軍用形といえばC-47ですがこれは初めから軍用機として製造されたものを指す型番です。旅客機を徴用した機体はC-49と呼ばれとりました。他にもC-48からC-53までの型番が振られていたそうですが、どういう区分なのかはわからんので割愛。なんとか戦争を生き延び(前線に行ったか知らんけど)、1945年にトランス・カナダ航空へ売却されました。このように戦後大量の余ったC-47等を民間へ放出することがDC-3のさらなる普及へ繋がったのです。なおダグラスは中古機の蔓延で新造機の注文があまり入ってこなかった模様。

1948年にグッドイヤーが機体を購入。1983年まで要人輸送用に使っていたそうな。その後当館へ寄贈されています。
民間機のコーナーは以上。最後の1930年代アメリカ製旅客機揃い踏みというのは、アメリカでも中々見れないんじゃないかという充実ぶりで素晴らしいものでした。というところで今日はここまで。

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