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北米project 5 ~How do you like Canada? その50【2016/6/15~22】

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次は航空機エンジンのコーナーです。10種類くらいのカナダにまつわるエンジンが並べられています。100年くらい前に作られたエンジンまでありますが、どれも新品のようにきれいな状態になっています。ここはさくっといきましょう。
これはギブソン社 (Gibson) の液冷直6ガソリンエンジンです。飛行家のウィリアム・ウォーラス・ギブソンが1910年に自分で設計した機体に搭載したエンジンです。これはギブソンが製作した2番目のエンジンで、カナダ人が設計したエンジンとしては現存最古の物です。どうやら1番目は現存しないようです。ギブソンの機体「ツインプレーン」は1910年にブリティッシュコロンビア州ビクトリアで初飛行しましたが、そのまま墜落してしまいました。幸い操縦したギブソンとエンジンは無事で、翌年は次の「マルチプレーン」でアルバータ州カルガリーで何度か飛行に成功しています。エンジンを見たところの特徴は、プロペラシャフトが前後両側に伸びていることでしょうか。これ、エンジンを中心に2枚のプロペラを配置しているためです。ツインプレーンの写真からも確認できます。


ダラック社 (Darracq) の液冷水平対向2気筒ガソリンエンジンです。1907年にブラジル生まれのフランス人、アルベルト・サントス・デュモンが開発しました。彼の開発した超軽量飛行機「デモワゼル」という(そういう名前なの)に搭載されました。次第にその能力が認められて生産の発注が舞い込んでくることになりました。この時エンジンの生産はフランスの自動車メーカー、ダラック社に発注しました。この時エンジンに係る特許をちゃっかりダラックが取得して、デュモンは揉めたそうですが・・・。結局デュモンが引き下がって生産は続行されましたが、この係争で疲弊したデュモンは航空事業から撤退したという後味の悪い最後でした。

カーチス・OX-5液冷V8ガソリンエンジンです。1915年アメリカ人のグレン・カーチスが設計したエンジンで、アメリカ人設計のエンジンでは初めて量産された型式です。同社が開発した軍用練習機JN-4ジェニーの搭載エンジンです。当時の競合機と比較すると出力が強力でもないし造りが先進的でもなかったです。ただしエンジンの値段が安いことと回転数を低く飛行できるので燃費が良いことから民間市場では人気があり、12,000台のエンジンが生産されています。1909年カナダで初めて飛行した動力付き飛行機「シルバーダート」のエンジンはOX-5の直系の先祖にあたる、ということでここで展示されているようです。


ビアードモア社 (Breadmore) の160HP液冷直6ガソリンエンジンです。1914年フェルディナント・ポルシェ監督の下、オーストロ・ダイムラー社製エンジンのライセンス生産版としてイギリスのビアードモア社が生産したものです。名前通り160馬力を出すエンジンなわけです。第一次世界大戦時の1916年からイギリスにある2社で2500台が生産されました。でも他のエンジンと比較するとあまり強力ではなかったので、観測機、戦闘機、軽爆撃機に搭載されました。

ルノー (Renault) 8Ca 液冷V8ガソリンエンジンです。フランスの自動車メーカー、ルノーが開発した航空機用エンジンです。同じ出力の他のエンジンと比べると重くて整備も煩雑だったようなので、あまり成功はしなかったそうな。第一次世界大戦時、フランス製の観測機や練習機に搭載されました。

ベントレー (Bentley) B.R.1 空冷ロータリー9気筒ガソリンエンジンです。ここで言うロータリーエンジンとは、マツダの同名のエンジンとは違うものだよというのは弊ブログでも何度か説明していますね。第一次世界大戦時のイギリス製エンジンの傑作です。有名なソッピース・キャメル戦闘機のエンジンもこれです。ベントレーというのは、これも自動車メーカーのベントレーのことですね。

ロールスロイス (Rolls-Royce) イーグルVIII 液冷V12エンジンです。1915年、自動車メーカーというか航空機エンジンメーカーでもあるロールスロイスが極初期に開発したエンジン、それがイーグルです。でかいエンジンなので重爆撃機や対潜哨戒飛行艇なんかに搭載されました。戦後もハンドレページやビッカースの民間機エンジンとして採用されたそうな。イーグルVIIIという名前の通り、幾度も改良されてきたわけです。最初のI型は225馬力だったのが、1917年から生産され始めたこのVIII型は300馬力あります。

ライト (Wright) J-4B 空冷星型9気筒ガソリンエンジンです。Jシリーズと呼ばれとるエンジンのひとつです。後にはワールウィンドシリーズと呼ばれとりまして、こっちの名前のほうが有名かね。安定した空冷エンジン供給がほしいアメリカ海軍の思惑によりライト社がエンジンの開発元を買収しろと命じたっていう、なるほど昔はこんなことしていたのねっていう。1924年に最初のJ-4型が開発されました。アメリカ製星型エンジンとしてはよく成功した物で、以降30年間は空冷レシプロエンジンは星型が優位となりました。リンドバーグの大西洋単独横断飛行に使われたセントルイス魂号のエンジンにはこのシリーズが使われました。あとはフォード、ウェイコー、トラベルエアなどのメーカーの飛行機にも。フォードというのは自動車メーカーのフォードですね。この頃は航空分野もやっていたのよ。

ネイピア (Napier) ライオンII 液冷W12です。W型エンジンって何って話ですが、1列4気筒のシリンダーを3列配置した物です。同じ気筒数のV型よりもクランクシャフトが短くできる代わりに横幅が広くなります。これ、初めて見ましたよ。というかネイピア社ってこんな頃からこういうエンジンを・・・。軍民問わず広く採用されて、商業的には成功しました。レース機にも使用されたそうな、なんだか意外。

ホール・スコット (Hall-Scott) A-7A 液冷直4ガソリンエンジン。アメリカのホール・スコットはこれも自動車メーカー(1910年~1960年)で、1910年代の開発でスタンダード社J-1練習機の動力に使われていました。作動中に火災が起きやすい問題がありましたが、この時代のエンジンは多かれ少なかれそういう症状持ちが多いので相対的な問題でした。

ここらへんから時代が進みます。プラット&ホイットニー・カナダ (Pratt & Whitney Canada) PT6A-20です。これはピストンじゃなくてガスタービンのターボプロップエンジンです。1960年開発のターボプロップエンジンの傑作で、軍民問わず様々な機種に採用されていて、ターボプロップ市場では最大手です。カナダの宝。

プラット&ホイットニー・カナダPW120ターボプロップエンジン。PW120はPW100の派生型で、PT6とは別系統のターボプロップです。PT6と比べて出力が高いようです。ボンバルディアDHC-8シリーズなどが主な搭載機です。

プラット&ホイットニー・カナダ JT15D-1ターボファンエンジン。1971年登場のビジネスジェットなど小型機用のターボファンエンジンです。主な搭載機はセスナ・サイテーションです。ターボファンにしては珍しい、遠心圧縮機を使用しています。

最後にレシプロに戻りますが、これはネイピア・セイバーVIIです。このエンジンを見れるとは・・・!1938年に完成した、液冷H型24気筒スリーブバルブ付き、出力は1号機では2400馬力、最終的には3500馬力というとんでもねえやつです。H型というのは、V型エンジンを上下に2つ重ねたようなものです。なのでこれの場合1列6気筒が4本ある格好です。原理的には星型エンジンと比べて高出力化と小型化に期待できましたけど、見ての通りの複雑さなので設計に色々無茶があり、信頼性に難のあるエンジンでした。当時のイギリスのエンジンはセイバーでなくても定評の高いマーリンにグリフォン、同じスリーブバルブ付きにもセントーラスがありましたから、あまり活躍の機会はなかったみたいです。セイバーの搭載機がハリケーンやテンペストだったのも運がなかったとも言えますが・・・。

どういう構造しとるねんという感じで、ひと目見ただけでは何も理解できなかったです。
というところでエンジン編は以上。今日はここまで。
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