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やってきたのは航空博物館Museum of Flight。シアトルの観光名所のひとつです。
航空機の黎明期から未来の宇宙開発に至るまで、アメリカ西海岸では最大級の収蔵量を誇る巨大な航空機の博物館です。ここをじっくりと見学していきます。
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ロビーには航空機の黎明期の機体が展示されています。
これはChanute-Herring 1896 Biplane Glider(レプリカ)。かの有名なライト兄弟が設計したグライダーにも影響を与えた、ライト兄弟登場以前のグライダーで最も成功したものです。
初期は三葉機でしたがこれでは揚力が過剰で却って安定性を欠く結果になってしまい、下部の主翼を取り外し複葉機としたところ性能が格段に良くなりました。
この、腕だけを支えに宙ぶらりんで飛行するというのはなかなか怖そうですね。
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Wright 1902 Glider(レプリカ)
ライト兄弟が開発した世界初の有人動力飛行機ライトフライヤーのプロトタイプとも言えるグライダーです。両者のシルエットはかなり似ています。
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Rumpler Taube(レプリカ)
オーストリアの飛行機で、第一世界大戦前のオーストリアおよびドイツで最も普及した機種でした。
戦前はスポーツ用でしたが、戦争が始まると偵察機として使われ始めました。しかし、新型機が投入されると運動性の悪さが露呈し、後方の訓練機へと転換されました。
これが兵器・・・?と疑うくらい華奢ですね。タウベとは「鳩」の意味だそうです。確かに第一印象は鳥です。
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ロビーの奥にあるグレート・ギャラリーへ入ります。一番大きな展示室で、あらゆる箇所にあらゆる年代の飛行機が展示されています。やることが派手だねえ。・・・さすが、アメリカのやることはスゲーなあ、やっぱ。
写真は全機撮影出来ていると思うんですが、全部紹介していたらすごく長引いてしまうので(鉄道博物館で全車掲載したらかなり延ばしてしまったのを反省している...)気になったものだけかいつまんでいきます。といっても、ここと第一次世界大戦の展示室以外はスキップできる機体がほとんど無さそうなんだよなあ。
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Boeing B&W(レプリカ)
ボーイング社が設計・製造した最初の飛行機(水上機)。ボーイングのお膝元ということでボーイング初の機体は外せないということですな。
アメリカ海軍にセールスするもつっぱねられ、最終的にニュージーランド政府が購入しました。最初から順調というわけにはいかないんですねえ。
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Swallow Commercial
1925年、ウォルター・T・バーニィはアメリカの郵政省からCAM5 (Contract Air Mail route No.5)というワシントン州パスコからネバダ州エルコまでのエアメール経路を取得し、その郵便輸送用に購入した郵便輸送機です。この機体はバーニィの所有していたものとは無関係ですが、そう見えるように改造してあるそうです。
ちなみにその後バーニィが設立したバーニィ航空は後のユナイテッド航空の前身です。
航空機が最初に運んだのは人ではなく郵便物なんですねえ。これはここに来るまで知らなかったことなので少々意外でした。確かにこの頃の機体では人を載せて採算を取るのは難しそうです。郵便なら軽くてたくさん積めるのでイケそうですね。連邦政府もエアメールを政策として進めていたようですし。
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Ford Model AA Truck 1931
航空博物館にフォードのAAトラックが。要は郵便配達車で、集荷した郵便を空港に運ぶだとかその逆だとか、そんな役割のトラックですね。これ一台で飛行機1機分の荷物を積めそうですね。
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Boeing Model 40B(レプリカ)
ボーイングが初めて開発した陸上用の複葉機。アメリカ郵政省の郵便輸送機として開発されたものの、競合相手のダグラスの機体が採用されたためこれはおじゃん。ところがこれを乗員4名の旅客機として再設計し40Aとしたのが成功しました。博物館の40Bはエンジンをプラット&ホイットニーのホーネットエンジンに換装したものです。
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フライトシュミレーター。なんだかすんごいぐるぐる回転してたけど、中はどういう状況なんだろうな、墜落しそうだったんじゃないかな。
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Boeing 80A-1
1928年8月に初飛行したボーイングの当時はまだ少数派だった旅客機。モデル80が12人乗り、モデル80Aが18人乗りです。
モデル80A-1はプラット&ホイットニーの525馬力ホーネットエンジンを3発搭載し、ユナイテッド航空とアラスカの建設会社で使用されました。モデル80唯一の現存機です。
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カウルがないので部品や配管がよく見えるホーネットエンジン。
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搭乗口はこんな感じ。ボーイング・エアトランスポートの文字も見えますが、ユナイテッド航空の塗装ってことでいいのかな?
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内装も扉からちらっと覗けます。金持ち相手の商売なのでまあまあ凝った造りに見えますね。
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Boeing Model 100
戦間期にボーイングで最も成功した戦闘機で、アメリカ陸軍にP-12として、アメリカ海軍にF4Bとして採用されています。
プラット&ホイットニーのエンジンのテストベッド機になったり映画俳優として映画に出演したりといった経歴を持っています。現在の塗装は陸軍のP-12仕様です。
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Granville Brothers Gee Bee Model Z "City of Springfield"
見るからに危なかっしい。これはエアレース用の機体です。速さを求めた結果、大きいエンジンに出来る限り小型化した胴体と主翼を組み合わせた寸詰まりのアンバランスな機体に仕上がりました。後に開発されるソ連のI-16戦闘機と似ていますね。
実際速く、当時の陸上機の世界最速記録267.342mph(430.153km/h)を記録しましたが、操縦は相当ピーキーだったようです。本当、ステータスをすばやさだけに振った機体です。そして最後には右主翼が脱落し墜落してしまいました。スピード狂らしい最期といえばそうなるか?
これはレプリカですが、安全性を高めるために胴体と主翼をわずかに延ばして、エンジンも馬力の低いものを搭載して操縦性を高めています。
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Stinson SR Reliant
2~6人乗りの小型旅客機です。写真は水上機ですが車輪やスキーを履くことも出来ます。いわゆる未開地用の機体、ブッシュプレーンですね。水上機はやはり目を引きます。
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そして時代は一気に第二次世界大戦後へ。第二次世界大戦の機体は別フロアにたくさん収蔵されています。これらは後々。
目に飛び込んでくるのはF-86とMiG-15。朝鮮戦争時の西側と東側の主力戦闘機ですね。この2機の並びが見れるなんて感動です。特に東側の機体なんて日本じゃ見られないのでね、いやあすごい。
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Mikoyan & Gurevich MiG-15bis
ソビエト連邦のミグ設計局が開発したジェット戦闘機です。1950年6月朝鮮戦争に投入され、アメリカ軍の昼間爆撃を停止させ、敵戦闘機に対して優位に立つなどの活躍を見せました。アメリカがF-86を投入してくるまでは。MiG-15bisはMiG-15の改良型で、MiG-15シリーズ中で最も多く生産されたタイプです。
博物館の機体は中国から持ち込まれたもので、そういう経緯もあるのか人民解放軍のマーキングがされています。
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まさかの中国でしたね。ソ連やないんかい。
ミグの亜音速ジェット機は吸気口が豚の鼻に見えるからなんだかなあ・・・という。
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Canadair CL-13B Sabre Mk.6
MiG-15と同様の亜音速ジェット機。CL-13BはF-86をカナダのカナディアがライセンス生産した機体です。他にもイタリア、オーストラリア、そして日本でもライセンス生産されました。
博物館の保存機は、カナダ空軍を退役後にボーイングのチェイサー機として飛行試験に携わっていました。そのせいか、機関銃の銃口が埋められていました。
今回はここまで。つづきます。
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