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北米project 4 ~Is the order a warbird? その22【2016/03/04~10】

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2016年3月5日(土)10時45分
カリフォルニア州チノ ヤンクス航空博物館
前回までに伝説の格納庫 Legend Hanger をやっつけることに成功した私を次に待ち構えるのは、星の戦士の格納庫 Starfighter Hanger と呼ばれる場所でした。
レジェンドハンガーは航空機の黎明期から第二次世界大戦までの航空機を見てきました。一方スターファイターハンガーでは第二次世界大戦から現在までの機体を展示しています。ジェット機もここから登場します。ここも強敵ぞろいなので慌てず落ち着いて見ていきましょう。



ここにおいてある機体じゃ最新か、マクドネル・ダグラスF/A-18Bホーネット(1978年)です。
みんなもう忘れているでしょうが昨日見たYF-17を原型とした機体がF/A-18なのであります。
YF-16とのアメリカ空軍の戦闘機採用競争に敗れたYF-17でしたが、捨てる神あれば拾う神ありな感じでアメリカ海軍によりそこの艦上戦闘機として敗者復活しました。ただし結構設計が手直しされていてもう別ものという機体に仕上がっています。大きさがYF-17から一回り大きくなっていますしね。
アメリカ海軍での現在の主力はF/A-18E/Fスーパーホーネットでして、初期型のA~D型、特に最初期のA/B型は退役が進んでいるようで、博物館入りしている機体が十数機おります。
これもそのうちのひとつで、青と黄色の派手な塗装はアメリカ海軍の曲技飛行部隊「ブルーエンジェルス」のそれです。アメリカ人は平気で個体の経歴と関係ない塗装に塗り替えてしまうんですが、この個体は実際にブルーエンジェルスで使用されていたようです。
じゃあブルーエンジェルスは今は何で飛んでいるのかというとA/B型の改良型であるC/D型を使っています。



空母で運用する艦上戦闘機は、狭い甲板の面積を最大限活用するために、場所を取る主翼を折りたためるようになっているのが常です。F/A-18もそうなっています。
博物館でもこの機構は展示面積の節約に役立つようで、艦上機はだいたい主翼が折りたたまれて展示されています。



後ろから。ああ、エンジンがごっそり抜かれていますね。戦闘機で一番金のかかる部品であるエンジンは盗難に合うとかなんとかで抜かれて展示されている場合が多いです。旧式のターボジェットエンジンならともかくF/A-18のエンジンはまだ使えそうですしね。
ちなみにこの機体はアメリカ海軍から借用して展示している・・・つまり博物館の持ち物ではないです。このように他の博物館や組織から機体を長期間借りて展示するというのもアメリカでは多いです。こういう機体が今後何機と出てきます。



なんだこのデブなセイバーは・・・(実際はセイバーよりも長さが短いので相対的に太って見えていただけのようだ)。結局この時はよく分からなかったのですが、後でよく調べてみるとノースアメリカンFJ-1フューリー(1946年)なのでした。これ、F-86セイバーの始祖と言える機体ですよ。
こんなの残っていたんだなぁと今更感激しています。ここ以外ではスミソニアン閣下しか現存機が無いらしいです。加えてスミソニアンの個体はレストアハンガーでバラされているようなので、まともな機体は世界中でヤンクスのこれだけということに。

1944年あたり、すでにイギリスやドイツではジェット戦闘機が運用され始めていて、アメリカ陸軍でもどうも実戦配備するらしいという時(なおその頃日本は烈風の初飛行で大喜びしていた(泣)、アメリカ海軍としても「乗るしか無い、このビッグウェーブに!」という感じでマクダネルさんチーム、ヴォートさんチーム、そしてノースアメリカンさんチームにジェット艦上戦闘機をそれぞれ発注します。
結局どれも終戦までには間に合わなかったんですが、3社の内一番で完成させたのがノースアメリカンさんチームのFJなわけです。よってアメリカ海軍初のジェット戦闘機という肩書を手に入れます。

設計には当時のノースアメリカンの主力商品、P-51ムスタングのものが流用されていて、主翼と水平/垂直尾翼はまんまP-51の形状そのものです。P-51の層流翼は当時最先端のものでしたので、それを使いたくもなるというものでしょう。
胴体だけはジェットエンジンを収めるために新しく設計を起こしていますが、よく見ると風防もP-51と同型っぽいですね。
そういうわけなので、セイバーの原型というよりはジェットエンジン版ムスタングという言い方もできます。
なおフューリー(Fury)は激怒、憤激という意味の名詞。イギリスにそんな戦闘機がいましたっけね。たぶん型式名の"F"から、それを頭文字にした名前をつけたかったんだと思います。



後ろから。
垂直尾翼は上記の通りP-51の流用なんですが、噴流の排気口が来る関係で操舵面の下側3分の1くらいは無い格好になります。だからどうなったんだろうというところまでは特にわからないんですが。

1946年に初飛行、1947年に量産型が部隊配備、1948年に空母へ離着艦しました。終戦で気が緩んでいたのかのんびりしたものです。
当時のカタパルト無しでの発艦は燃費は最悪だし速度も遅くて危険だし・・・とあんまり実用的ではなく、課題が残る結果になりました。まだこの頃は試行錯誤の段階だったでしょうしね。
そんな事情もあって、最初に発注された30機だけで配備は終わってしまい、それも1953年までに全機退役してしまいました。ただし、これに興味を示したアメリカ陸軍が発注したXP-86がその後大化けすることになるんですがそれはまた別のお話。



前から。
機首の形状がブサイクという印象で、セイバーの精悍さはまだ無いですかね。
フューリーは主翼の折り畳み機構は無いですが(折り畳もうとするとP-51の主翼を再設計する必要がある)、代わりに前輪の脚を縮めて機首をおじぎさせる機構、ニーリング装置を持っていました。機首を下げると反対に尾部が上がる格好になるので、その空間にもう1機のフューリーが頭を突っ込むことで狭い空母の甲板を無駄遣いしないというものでした。ただ、あんまり効果がなかったんですかね、他の艦上機では聞いたことない機能です。
余談ですがおじぎするってどんなもんなだろうとググってみたんですが、思ってた以上に深々としたもので、不時着して前脚折ったんじゃないのか?という印象でした。可愛らしさすら感じます。気になる人は「FJ-1 kneeling」とでも入力して検索してみてください。



ポンと置かれているジェットエンジン。たぶんFJ-1のアリソンJ-35ターボジェットエンジンだと思います。
遠心式圧縮という方式で空気を圧縮する初期のジェットエンジンでございます。アメリカとイギリス、あとはそれをコピーしたソ連なんかが使っていました。
構造は簡単なんですが高出力化しようとするとエンジンの直径がデカくなってしまって、だんだん戦闘機のサイズに収まらなくなったことから(直径が大きい→正面面積が広い→空気抵抗がヒドすぎてイカン)、1950年代には早々と軸流圧縮方式のエンジンに鞍替えしてしまい現在では絶滅に追いやられています。
・・・なお両者の原理まで説明しようとするととても大変なので勘弁してやってください。ほんとに。

FJ-1はここまで。



F-14の首。説明もなくただ置かれているだけでした。航空博物館によくあるコックピットに座れる展示物だったのかもしれません。



館内の通路はここでふた手に分かれているのですが、とりあえずレシプロ機の多そうな左側に進んで年代順に機体を見ていきましょう。



またすげぇ形のヘリコプターですが、これはマカロックHUM-1(MC-4A)(1951年)です。マカロック(McCulloch)というのも聞いたことない会社ですが、航空機専業の会社ではなく大本はチェーンソーを作る会社でそこの一部門という形態になります。関連性が薄そう・・・でもゴム会社が戦闘機造っていた時期だってあったし、もうわかんねぇな。
回転翼が前後に2基付いているタンデムローターヘリコプターでして、この手の種類ではこれが世界初なんだとか。
胴体の前半分には2人乗りの操縦室、後ろ半分はエンジンルームになっています。視界は良さそうですが生きた心地がしなさそうです。
元々は商業用に造られたやつなんですが、軍も興味を示して試験機を発注しました。でも満足行くものではなかったようで、それで終わってしまいました。
この機体は海軍が発注したHUM-1の2機の現存機のうちの1機。残りの1機は明後日行くピマにあるんだそうな。ちなみに陸軍の発注したYH-30は3機が現存らしい。民間型のMC-4はちょっとよく分からなかったです。



操縦室はこうんな感じ。あんあり奥まで覗けなかったのでよく分からん。
タンデムローターですが上記の通り胴体の半分はエンジンに割かれていて、残りも人間が乗るだけで精一杯な感じです。ちょっと輸送力に難ありだったのかも。



胴体後部はアクセスパネルがあってガバチョとエンジンルームを開けられるようになっています。
エンジンは 200馬力のフランクリン6A4-200-C6だそうで、聞いたことなかったです。これ1つで回転翼を2つ回すようになっています。



尾部には垂直安定板があります。方向舵の機能は無さそう。



爆弾です。AN-M65 1,000ポンド爆弾(≒453kg)ですかね。第二次世界大戦時の航空機用爆弾でございます。爆撃機に装備されていたようで。



げげっ桜花じゃん。ここにもいるとは思わずちょっと不意打ちを食らう。
米軍機だらけのヤンクスでは珍しい他国の機体横須賀空技廠 桜花11型です。まあ、日本がこんなのを考えだしたと思うと、見るたびになんだか困った気持ちになってしまいますね・・・。

日本軍が戦争末期に投入した特攻のための神風兵器のひとつでありまして、言ってしまえば人間を誘導装置に使う対艦ミサイルです。脱出は端から考えられていないんで攻撃の成功すなわち死という、とてもじゃないですがまともな兵器じゃないです。
ちなみにドイツもV1飛行爆弾に人間を乗せて対艦攻撃をさせる事実上特攻兵器のFi103Rというのを考案していました。こちらは実戦投入されませんでしたが、軍隊追い詰められると何でもありになってくるんだなと。
車輪が付いていないので自力で飛行することが出来ませんし(写真のは台車に乗っかっている)、そもそもロケット推進ですから航続距離が短すぎました。なので、双発の一式陸上攻撃機に懸架されて敵の近くまで運んでもらい、敵艦隊の近くで発射されるという運用がされました。
使い物になる兵器ではなく褒められた兵器でもないため、米軍からは「バカボム」のコードネームを付けられたのは有名な話。いわゆる馬鹿という意味ではなく、愚かとか狂ってるという意味合いで名付けたんじゃないかと思いますが。
ドイツのビックリドッキリメカ軍団同様珍しい兵器だったため、終戦後アメリカが何機か接収していってその後は博物館入りしました。アメリカの有名な航空博物館でならだいたいどこにでもいるという機体です。

神風がどうとか搭乗員がどうとかって話はメンドクサイので深入りはしないでおきましょう。それがいい。

というところで今日はここまで。


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