前回までのあらすじ
2016年3月4日~10日の7日間でアメリカ旅行に繰り出した六丸三クン。目的はアメリカに保存されている膨大な歴史的航空機をバカみたいにたくさん見てくること。
最初の3日間「第一部 飛行機だらけのロサンゼルス編」ではロサンゼルスを拠点にし航空博物館4箇所、戦艦博物館と鉄道博物館1箇所ずつに赴く。数えてみたら既に260機以上の航空機を見たことになり、ぶっちゃけ既に飽きが見え始めていた。
そして6日の深夜、舞台をアリゾナ州ツーソンへ移して翌朝を迎えた3月7日。今回の旅行、というか今まで訪れた中で最強の航空博物館「ピマ航空宇宙博物館」との対決へ向かうのであった・・・。
では「第二部 アリゾナの大砂嵐編」始まりです。
2016年3月7日(月)9時32分
アリゾナ州ツーソン ピマ航空宇宙博物館
来たぞ!対決の地!
ピマ航空宇宙博物館 Pima Air & Space Museum はアリゾナ州ツーソンにある航空博物館です。アメリカの航空博物館の中では有名な部類に入ります。これから嫌というほど味わってもらいますが、32万平米の広大な敷地に300機の航空機を収蔵しているクソでかい博物館です。主に米軍のWWII以降の機体を集めていて、定番からレア物まで色々持っています。
また、アメリカ空軍のデイビスモンサン基地が隣接しています。ここは予備役になったり退役した戦闘機を長期保管しておくための土地「飛行機の墓場」を持っていて、これを見学できるツアーも人気なのです。これも行くよ。
この博物館では対決時間をほぼ1日取っていましたが、あまりに見るものが多く、全然時間がありませんでした。完敗です。まともに見ようと思うと1日では足りません。なので入館口のチケット売り場で2日券を売っていて、最初「大げさだなぁ(笑)」と笑っていましたが、なるほどこれは2日掛けないと無理だわ。死ぬわ。
場所はここ。砂漠です、砂漠。この乾燥した気候は飛行機の屋外保存に適しています。博物館の北側にデイビスモンサン基地があり、「飛行機の墓場」にここが選ばれたのも同様の理由です。
航空写真から察せられる通りやべー数の飛行機が置かれているのが分かりますね。やべーんですよ。外に置いてあるやつの半分くらいは輸送機や爆撃機みたいな大型機だぞ。やべーんだぞ。
ツーソンの町の外れに立地していて、周りは砂漠です。公共交通機関は走っておらず、自家用車かタクシーで行くしかありませぬ。レンタカー借りることはないと思ったんで、ホテルからタクシーを呼んで行きました。
歩いていくのはムリすればいけると思いますけど、やっぱムリだと思いますよ。夏場は死にますよきっと。
受付で入館料(1日券)を払います。その時一緒に飛行機の墓場のツアーも申し込んでおきます。このツアーは観光バスに乗って行く定員制なので、満員になる前に申し込んどかないとイカンのです。
まずは屋内保存されている機体を見ていきましょう。建物はこの本館の他に別館が何棟か建ってます。この別館には終盤まで気付くことが出来ずに結果時間配分を間違えることに。
ライトフライヤー(2日ぶり3機目・263機目)
アメリカの航空博物館の入り口によく置いてあるやつ。本物はスミソニアンが持っているので、これもいつもの通りレプリカです。
ライトフライヤーを開発したライト兄弟とスミソニアンの間ではかつて骨肉の争いをしていたんですが、脱線しまくるので割愛。
今回はエンジンを見ていきますよ。なんでって入り口に置いてあったからよ。とはいえエンジンに時間を掛けてる余裕はないので1~2枚写真撮っておわりです。
これはモナスコC6S-4スーパーバッカニア。スーパーチャージャー付き6気筒空冷290馬力直列型エンジンです。
1930年代のレース機に使われていたエンジンで、これは1937年製。同年開催されたエアレースのトンプソン杯でC6Sを積んだフォルカーツSK-3が優勝しました。このエンジンがそれなのかは分かりませぬが。
キナーK-5
1929年製100馬力5気筒空冷星型エンジンです。1930年代では最も成功したエンジンで、軽飛行機やスポーツ機に多く採用されたとか。
セーケイSR-3
こっちは40馬力3気筒空冷星型エンジン。これは1920年代によく売れたそうな。
レンジャーL-440
175馬力6気筒空冷直列型エンジン。昨日マーチフィールドで見たPT-19などに搭載されていたエンジンです。
直列エンジンはどっちかというと自動車用のエンジンな気がしますが、やはり胴体を細くできるから開発されたんでしょうか?
ただし直列エンジンは性能向上させようと思って気筒を増やすとひたすらエンジンが長くなりますから、限界があったんでしょうか1930年代後半からはまず見なくなったと思います。以降は星型エンジンに取って代わりましたね。
マカロック航空機試作エンジン
1970年に開発された比較的新しい星型エンジン。なんでもディーゼルエンジンだそうな(普通の航空機レシプロエンジンはガソリンで動く)
星型エンジンはクランク回転で回転力を生まない死点を出さないように必ず1列の気筒の数は奇数になっているんですが、これは4気筒エンジンという点にも注目。どういう構造しているのかは知りませぬが、ちゃんと動作して飛行も出来てたということなので性能に問題はなかったんでしょう。
ライトR-975ワールウィンド
300~450馬力9気筒空冷星型エンジン。1930年代のエンジンで、この頃になると見覚えの深い9気筒エンジンが出てきますね。当時の練習機などを始めフォード・トライモーター旅客機にも採用されていました。
なお脱線ですが、この頃のライト航空機社は既にカーチス社と合併してカーチス・ライト社になっていました。元々両者は因縁の仲のライバル関係だったんですが、色々あって合併しました。でもあんま仲が良くなかったのか知りませんが、合併後もブランド名は製品によって分けて使っていて、エンジン類はライトブランド、航空機類はカーチスブランドを使い分けていました。
なおカーチスの航空機には必ずしもライトのエンジンが使われていたわけではないです。そこら辺も少し不思議です。
ゼネラルエレクトリックJ47
GEの開発したジェットエンジンです。主にF-86とかB-47とかに採用されました。両者ともバカスカ量産されましたし、B-47に至っては1機につき6発のエンジンを載せるわけですからエンジンの生産数は膨大なものになり、しめて36,000基も造られました。
でもってこのJ47ですが(右側が前)、これ軸流圧縮式だったのですか。マジか。てっきり遠心圧縮式だとばかり思っていましたがいやはや。
でも燃焼室(左側の赤と青の筒)が複数に分割されていて、これは遠心圧縮式で見られるものです。軸流圧縮式でこれをやる意味はあまり無いので(なので現代の軸流圧縮式エンジンでは見られない設計)まだ設計が成熟していなかったのだなーと。
ご覧の通りカットモデルにされていて、圧縮タービンや燃焼室の様子を見ることが出来ます。一応その写真も撮っておきましたが今回は飛ばします(手抜き)
ホールスコットA-7A
1910年製100馬力4気筒空冷直列型エンジン。飛行中よくエンジンが燃えることで有名だったんだそうな。
クレルジェ9B
1917年フランス製の130馬力9気筒ロータリーエンジン。第一次世界大戦のキャメルF1やニューポール12などの英仏戦闘機に使われました。
ロータリーエンジンというとマツダなんかが使っているおむすび型の圧縮機構を持っているエンジンと名前は同じですが、中身は全く異なるものです。このロータリーエンジンはエンジンそのものが回転するまさにロータリーなエンジンなのです。なので起動中はエンジン自体がぶん回る愉快なことになります。プロペラシャフトとエンジンがバッチリ固定されてるのが分かると思います。
部品点数を減らして軽量化出来てコストも下がる利点がありますが、エンジン出力が向上して回転数が上がっていくとオイルは漏れるわ遠心力で部品が耐えられないわで、その性能向上には限界がありました。せいぜい100馬力級エンジンが限界で、以降はよく見る星型エンジンなんかに取って代わられました。
プラット&ホイットニーR-1340ワスプ
1945年製550~600馬力9気筒空冷星型エンジン。P&Wのワスプシリーズの基礎です。T-6やDHC-3なんかに搭載されていました。
ウェスティングハウス19Bヤンキー
1943年製最初期のターボジェットエンジンでこれも珍しいと思われ。19Bは試作エンジンの名前で、量産型はJ30と呼び、こっちのほうが通りが良いですかね。
ご覧の通り軸流圧縮式でして、この時期のアメリカのジェットエンジンはみんな遠心圧縮式だと思っていたので意外でした。しかもイギリスのコピーとかではなくオリジナルの設計だとかで。
量産型はF4Uコルセアなんかに搭載されて試験されたんだそうな。
というところでエンジン関連は以上。初期の直列型エンジンを始め珍しいものが多くなかなか見応えありましたね。
次回から機体展示を見ていきますよ。
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2016年3月4日~10日の7日間でアメリカ旅行に繰り出した六丸三クン。目的はアメリカに保存されている膨大な歴史的航空機をバカみたいにたくさん見てくること。
最初の3日間「第一部 飛行機だらけのロサンゼルス編」ではロサンゼルスを拠点にし航空博物館4箇所、戦艦博物館と鉄道博物館1箇所ずつに赴く。数えてみたら既に260機以上の航空機を見たことになり、ぶっちゃけ既に飽きが見え始めていた。
そして6日の深夜、舞台をアリゾナ州ツーソンへ移して翌朝を迎えた3月7日。今回の旅行、というか今まで訪れた中で最強の航空博物館「ピマ航空宇宙博物館」との対決へ向かうのであった・・・。
では「第二部 アリゾナの大砂嵐編」始まりです。
2016年3月7日(月)9時32分
アリゾナ州ツーソン ピマ航空宇宙博物館
来たぞ!対決の地!
ピマ航空宇宙博物館 Pima Air & Space Museum はアリゾナ州ツーソンにある航空博物館です。アメリカの航空博物館の中では有名な部類に入ります。これから嫌というほど味わってもらいますが、32万平米の広大な敷地に300機の航空機を収蔵しているクソでかい博物館です。主に米軍のWWII以降の機体を集めていて、定番からレア物まで色々持っています。
また、アメリカ空軍のデイビスモンサン基地が隣接しています。ここは予備役になったり退役した戦闘機を長期保管しておくための土地「飛行機の墓場」を持っていて、これを見学できるツアーも人気なのです。これも行くよ。
この博物館では対決時間をほぼ1日取っていましたが、あまりに見るものが多く、全然時間がありませんでした。完敗です。まともに見ようと思うと1日では足りません。なので入館口のチケット売り場で2日券を売っていて、最初「大げさだなぁ(笑)」と笑っていましたが、なるほどこれは2日掛けないと無理だわ。死ぬわ。
場所はここ。砂漠です、砂漠。この乾燥した気候は飛行機の屋外保存に適しています。博物館の北側にデイビスモンサン基地があり、「飛行機の墓場」にここが選ばれたのも同様の理由です。
航空写真から察せられる通りやべー数の飛行機が置かれているのが分かりますね。やべーんですよ。外に置いてあるやつの半分くらいは輸送機や爆撃機みたいな大型機だぞ。やべーんだぞ。
ツーソンの町の外れに立地していて、周りは砂漠です。公共交通機関は走っておらず、自家用車かタクシーで行くしかありませぬ。レンタカー借りることはないと思ったんで、ホテルからタクシーを呼んで行きました。
歩いていくのはムリすればいけると思いますけど、やっぱムリだと思いますよ。夏場は死にますよきっと。
受付で入館料(1日券)を払います。その時一緒に飛行機の墓場のツアーも申し込んでおきます。このツアーは観光バスに乗って行く定員制なので、満員になる前に申し込んどかないとイカンのです。
まずは屋内保存されている機体を見ていきましょう。建物はこの本館の他に別館が何棟か建ってます。この別館には終盤まで気付くことが出来ずに結果時間配分を間違えることに。
ライトフライヤー(2日ぶり3機目・263機目)
アメリカの航空博物館の入り口によく置いてあるやつ。本物はスミソニアンが持っているので、これもいつもの通りレプリカです。
ライトフライヤーを開発したライト兄弟とスミソニアンの間ではかつて骨肉の争いをしていたんですが、脱線しまくるので割愛。
今回はエンジンを見ていきますよ。なんでって入り口に置いてあったからよ。とはいえエンジンに時間を掛けてる余裕はないので1~2枚写真撮っておわりです。
これはモナスコC6S-4スーパーバッカニア。スーパーチャージャー付き6気筒空冷290馬力直列型エンジンです。
1930年代のレース機に使われていたエンジンで、これは1937年製。同年開催されたエアレースのトンプソン杯でC6Sを積んだフォルカーツSK-3が優勝しました。このエンジンがそれなのかは分かりませぬが。
キナーK-5
1929年製100馬力5気筒空冷星型エンジンです。1930年代では最も成功したエンジンで、軽飛行機やスポーツ機に多く採用されたとか。
セーケイSR-3
こっちは40馬力3気筒空冷星型エンジン。これは1920年代によく売れたそうな。
レンジャーL-440
175馬力6気筒空冷直列型エンジン。昨日マーチフィールドで見たPT-19などに搭載されていたエンジンです。
直列エンジンはどっちかというと自動車用のエンジンな気がしますが、やはり胴体を細くできるから開発されたんでしょうか?
ただし直列エンジンは性能向上させようと思って気筒を増やすとひたすらエンジンが長くなりますから、限界があったんでしょうか1930年代後半からはまず見なくなったと思います。以降は星型エンジンに取って代わりましたね。
マカロック航空機試作エンジン
1970年に開発された比較的新しい星型エンジン。なんでもディーゼルエンジンだそうな(普通の航空機レシプロエンジンはガソリンで動く)
星型エンジンはクランク回転で回転力を生まない死点を出さないように必ず1列の気筒の数は奇数になっているんですが、これは4気筒エンジンという点にも注目。どういう構造しているのかは知りませぬが、ちゃんと動作して飛行も出来てたということなので性能に問題はなかったんでしょう。
ライトR-975ワールウィンド
300~450馬力9気筒空冷星型エンジン。1930年代のエンジンで、この頃になると見覚えの深い9気筒エンジンが出てきますね。当時の練習機などを始めフォード・トライモーター旅客機にも採用されていました。
なお脱線ですが、この頃のライト航空機社は既にカーチス社と合併してカーチス・ライト社になっていました。元々両者は因縁の仲のライバル関係だったんですが、色々あって合併しました。でもあんま仲が良くなかったのか知りませんが、合併後もブランド名は製品によって分けて使っていて、エンジン類はライトブランド、航空機類はカーチスブランドを使い分けていました。
なおカーチスの航空機には必ずしもライトのエンジンが使われていたわけではないです。そこら辺も少し不思議です。
ゼネラルエレクトリックJ47
GEの開発したジェットエンジンです。主にF-86とかB-47とかに採用されました。両者ともバカスカ量産されましたし、B-47に至っては1機につき6発のエンジンを載せるわけですからエンジンの生産数は膨大なものになり、しめて36,000基も造られました。
でもってこのJ47ですが(右側が前)、これ軸流圧縮式だったのですか。マジか。てっきり遠心圧縮式だとばかり思っていましたがいやはや。
でも燃焼室(左側の赤と青の筒)が複数に分割されていて、これは遠心圧縮式で見られるものです。軸流圧縮式でこれをやる意味はあまり無いので(なので現代の軸流圧縮式エンジンでは見られない設計)まだ設計が成熟していなかったのだなーと。
ご覧の通りカットモデルにされていて、圧縮タービンや燃焼室の様子を見ることが出来ます。一応その写真も撮っておきましたが今回は飛ばします(手抜き)
ホールスコットA-7A
1910年製100馬力4気筒空冷直列型エンジン。飛行中よくエンジンが燃えることで有名だったんだそうな。
クレルジェ9B
1917年フランス製の130馬力9気筒ロータリーエンジン。第一次世界大戦のキャメルF1やニューポール12などの英仏戦闘機に使われました。
ロータリーエンジンというとマツダなんかが使っているおむすび型の圧縮機構を持っているエンジンと名前は同じですが、中身は全く異なるものです。このロータリーエンジンはエンジンそのものが回転するまさにロータリーなエンジンなのです。なので起動中はエンジン自体がぶん回る愉快なことになります。プロペラシャフトとエンジンがバッチリ固定されてるのが分かると思います。
部品点数を減らして軽量化出来てコストも下がる利点がありますが、エンジン出力が向上して回転数が上がっていくとオイルは漏れるわ遠心力で部品が耐えられないわで、その性能向上には限界がありました。せいぜい100馬力級エンジンが限界で、以降はよく見る星型エンジンなんかに取って代わられました。
プラット&ホイットニーR-1340ワスプ
1945年製550~600馬力9気筒空冷星型エンジン。P&Wのワスプシリーズの基礎です。T-6やDHC-3なんかに搭載されていました。
ウェスティングハウス19Bヤンキー
1943年製最初期のターボジェットエンジンでこれも珍しいと思われ。19Bは試作エンジンの名前で、量産型はJ30と呼び、こっちのほうが通りが良いですかね。
ご覧の通り軸流圧縮式でして、この時期のアメリカのジェットエンジンはみんな遠心圧縮式だと思っていたので意外でした。しかもイギリスのコピーとかではなくオリジナルの設計だとかで。
量産型はF4Uコルセアなんかに搭載されて試験されたんだそうな。
というところでエンジン関連は以上。初期の直列型エンジンを始め珍しいものが多くなかなか見応えありましたね。
次回から機体展示を見ていきますよ。
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